機械を透る音の波

プロローグ 始まりの音楽

 僕は電子の海の片隅で眠り続ける一匹の猫だ。マスターはきっと僕がちゃんと眠り続けるようにと、僕を【猫】にしたんだろうと思う。
 僕の名は、ノルディーク・Nohref・Date・シュレディンガーという。呼び難ければノルと呼んでくれればいい。先程も言った通り、僕の仕事は眠り続ける事だ。マスターの意図は分からないけど、僕は確かにネットの中にいる。そして、通り過ぎる様々な人を聞いている。それを子守り歌にして、僕は眠り続けている。
 僕が何を聞いているかって?仕方がない、面倒臭いけど説明しようか。
 電子の海を渡る人々は、音楽のようなものだと思う。ほら、キンキンと鋭い音を立ててるあの人は、きっと警察とかそういう堅い仕事の人だ。ちょっと僕には近寄り難いかな。それに硬質の綱渡りのような音のあの人は、きっとロックとかメタルとかいう音楽関係1)の人じゃないかな。それからあのピアノで弾く「ねこふんじゃった」みたいな甘い気配のあれは、子供かなんかだと思う。通り過ぎてゆく人々はこんな風に音にならない音楽を身に纏いながら、僕の傍を擦り抜けていくんだ。たとえこの音楽が今の君に聞こえなくても、僕と一緒に眠っていれば、いつか聞こえるんじゃないかと思う。
 僕はそんな音楽を聞きながらずっとここで眠っている、今もね。
 でも時々、僕の眠りを覚ますような音が聞こえてくるんだ。そんな時、僕はちょっとの間だけ起きて、その音楽を覗きに行くんだ。
 ほら、今もまた聞こえて来たよ・・・

1)
「ロックとかメタルとか」とまとめて書いてあるが、演奏する人達に言わせると天と地ほどの差があるらしい
text/kikai.txt · 最終更新: 2023/06/24 06:50 by 127.0.0.1
CC Attribution-Noncommercial-Share Alike 3.0 Unported
Driven by DokuWiki Recent changes RSS feed Valid CSS Valid XHTML 1.0