「2ひきの うさぎ」

ここは 深いふかい 山の中。
土の中の ちいさな うろ に
白いうさぎと 黒いうさぎが くらしています。

2ひきは とても なかよしです。
おいしい木の実を たべるときも 
さむくて ふるえるときも 
いつでも いっしょに ささえあって くらしていました。

ある日 いつものようにあそんでいると 
見たことのない 灰色の おおきなうさぎが あらわれました。
2ひきが びっくりして ちいさくなっていると 
そのうさぎは にこりとわらって とても すてきなものを くれました。

2ひきは とてもよろこんで 夜になるまで ずっと それをながめていました。

「なんて すてきなものを もらったんだろう!
これを ぼくたちの たからものにしよう。
ここにおいて 毎日 いっしょに見にこよう」

そうして2ひきは ちいさな うろ に帰ると いつものように眠りました。

次のあさ。
目をさました 黒いうさぎは はりきって言いました。
「さぁ 昨日もらった ぼくたちのたからものを見に行こう!」

ところが 白いうさぎは すこしなやんで 首をひねっていうのです。
「ねえ ぼくたちのたからものって なんだったっけ?」

黒いうさぎは びっくりしました。
おしえようと思ったら 黒いうさぎも 思いだせないことに きづきました。
どこに なにを おいてきたのか すっかり忘れてしまったのです!

 
「とても すてきなものだったのは 覚えているんだ。
きみと ぼくの たからものにするって決めたんだ。
あきらめられない、でも どうしてもおもいだせないんだ!」

黒いうさぎは とてもかなしくて くやしくって おおきな声で言いました。

白いうさぎは すこし悩んで あかるい声で いいました。
「きっと すこしねぼけているだけだよ。
近くまでいけば 思いだすかもしれない。
だから あきらめないで いっしょに さがしにいってみよう!」

そうして 2ひきのうさぎは うろ をでて たからものを さがしにでかけました。

2ひきは あちこちを 跳ねてまわりました。
山のてっぺんまでのぼってみると 空にはもう お月様がうかんでいます。

黒いうさぎが かなしそうにいいました。
「どうしてみつからないんだろう。
こんなに探してるのに おもいだすことも できないなんて」

白いうさぎは やさしく笑っていいました。
「だいじょうぶ きっとみつかるよ。
こんやは ここで眠って 
明日になったら 山のむこうを さがしにいこう。
ほんのすこし 風にとばされてしまったのかも しれないからね」

次の日 
2ひきのうさぎは 山のむこうをおりていきました。
でも やっぱりみつかりません。

「こんなに見つからないなんて。
どうして あのとき ぼくはたからものを おいてきてしまったんだろう!」
黒いうさぎは すこし怒ったようにいいました。

白いうさぎは ほほえんで いいました。
「君のせいじゃないよ。 きっと だいじょうぶ。
みて。むこうに 川がある。
すこし川にながされてしまったのかもしれない。
明日は この川にそって さがしてみよう」

2ひきのうさぎは なんにちも なんにちも 
おもいだせない すてきなたからものを さがしつづけました。

ひもじく さむい ふゆの日は とてもつらく
あきらめて ひきかえそうかと 思いました。
でも もしかしたら あとすこし先に あるのかもしれない。
そうおもって 2ひきのうさぎは すすみつづけました。

春のうつくしい花が 咲いたときには 
たちどまったり ふりかえったり ゆっくりゆっくりすすみました。
花にみとれて しらずしらず たのしくすごしているうちに
たからものを 見逃してしまったかもしれないと しんぱいになるからです。

まっかなたいようが じりじりと照らす夏には
つかれて のども渇き いらいらすることもありました。

でも 2ひきがはなれて バラバラに じぐざぐに歩くのは
けんかをして そばにいたくないからではありません。
ほんのすこしだけ 道がずれているかもしれないと おもったからです。

おなかいっぱいに だいすきな木のみを食べた秋には
今までよりずっと がんばって たからものを さがしました。

でも 手の届かないところにある 木の実を見て
もしかしたら 高いところにあったのかもしれない と 
ふあんになって 上ばかりを見てあるいたりもしました。

そして ながいあいだ あるきつづけた 2ひきのうさぎは 
ついに ぐるりと一周して もとの うろ のそばまで かえってきていました。
たからものは 見つからないままです。
2ひきは うろの 中にはいると だまって おたがいをみつめあいました。

うつくしい 絹のような毛並みだった白いうさぎは
長いたびで すっかり汚れて 灰色になっていました。

黒いうさぎは しずかな声で とてもかなしそうに いいました。

「こんなになるまで きみも がんばってくれたのに
ぼくは きみに またあの すてきなたからものを 見せてあげられなかった。
ほんとうに ごめんね」

そういって涙をながす 黒いうさぎは
いつのまにか すっかり年老いて 白髪がたくさんまじっています。

それをみた白いうさぎは 微笑むのをやめて まじめな顔をしていいました。

「もっとはやく 言わなきゃいけなかったことが あるんだ。
ほんとうは たからものなんて ぼくは知らなかったんだ。
きみの見た 夢じゃないかと思っていたんだ。

でも もしかしたら 
ぼくが きみ以上に 思い出せないだけなのかもしれない。

そうおもったら 不安で 何もいえなかったんだ。 
ずっと ずっと 言えなくて ほんとうに ごめん」

黒いうさぎは びっくりして目をまんまるくすると
大きな声で 泣き出しました。

「ぼくのみた夢かもしれないと 思っていたのに
それでも いっしょにずっと探してくれていたなんて。

すてきなものを また 君と見ることはできなかったけれど
ぼくはいま とてもうれしい。 ほんとうに ありがとう。」

白いうさぎは それを聞いて とても安心して 泣きだしました。

「きみが ぼくといっしょにみたいって いってくれたから。
ぼくのために こんなにいっしょうけんめいに 探してくれたから。
だから こんなにいっしょに がんばってこれた。

ほんとうに ありがとう。」

2ひきのうさぎは 涙をながして だきしめあいました。
汚れた白い毛と 白髪まじりの黒い毛は なみだに濡れて 
とけあうように おなじ灰色になっていきました。

「ぼくたちは すてきな ぼくたちだけのたからものを さがしてた。 
それは たしかに  いま ここにあるんだ。
ほんとうの かけがえのない たからものが」

2ひきのうさぎは うれしそうに笑いあったあと 
つかれた体をやすめるために 抱きしめあって しずかにふとんにもぐりました。

その夜 2ひきのうさぎは おなじ夢を見ました。

むじゃきで ちいさなうさぎたちが たのしそうに じゃれています。
2ひきはよりそったまま そのちいさなうさぎたちに 一冊のアルバムをわたしました。

山の中で ただたのしく くらしていた なつかしい日々。
おたがいを思い はげましあいながら いっしょうけんめいすごした日々。 

ふたりが出会ってから いままですごしてきた日々の
すてきな思い出が たくさん詰まったアルバムです。
ちいさなうさぎたちは 目をかがやかせて 仲良くよりそい 笑いあって それを見ています。

「ぼくたちは さいしょから いままで ずっと 
たからものを なくしたりなんて していなかったんだね。
ただ もってることに 気づかなかった だけだったんだ」

「そうして ながいあいだ さがしつづけていたから
こんなにたくさん すてきなたからものが ふえたんだ」

「「それは きみのおかげだね」」

2ひきのうさぎは 幸せそうに いつまでも笑っていました。

深いふかい 山の中
土の中の ちいさな うろ で
2ひきの おなじ色をしたうさぎたちは
今日も たからものを ふやしつづけています。

おしまい


作者:生キャラメル ◆XksB4AwhxU氏
【子供向けの物語を純粋な気持ちで書いてみようシリーズ】テスト1より
掲示板などへは未投下の作品だそうです。
一度、公開中止をされたのですが、
無理を言ってFlashへの使用許可と公開許可を頂きました。
(現在、生キャラメル氏のサイトは閉鎖されています)