====== TwiNovel ====== Twitter字数制限140文字以内で書く小説 またはTwitterがらみで公開した短編一覧 ===== 戦場の傭兵 ===== [color=LightGray]**2015.04.13 16:22:09**[/color] 何時迄、戦えば満たされるのだろう 最早、静寂の中でなど眠れはしない 砲弾の響きに緩む口元を隠す為 紫煙を吐き出し、泥のような珈琲を口にする 今は震え怯える相棒も、何時か知るのだろうか 肩を並べ、戦場を駆け抜ける その激情と快楽を…… 血と炎に紅く染まる 狂気に満ちた現実を…… ===== 頑張るヘタレ(フレーズ「珈琲」) ===== [color=LightGray]**2015.01.09 05:10:25**[/color] 呆れたような溜息で、彼は砂糖とミルクを差し出した 「飲めるってば!せっかく、いれてくれたんだし、そのまま飲むよ」 彼の趣味を知りたくて、苦手な珈琲を飲む 苦くて、良さが、よくわかんない 「美味しく飲んで欲しいよ」 優しく言われる度に意地になる 悔しいのに、砂糖に手が伸びた ===== 雪の日 ===== [color=LightGray]**2015.01.09 04:45:02**[/color] 雪の日はいい 何もかもを、世界を白く塗り潰して、俺の赤く濁る心すら 白く、消して、隠して 埋めて、ただ一人、誰もいない 吐息すら白く、煙る視界に混ざり、 音すらも吸い込んでいくんだ 新しいその世界へ、俺は煙草を吐き捨て、 また、血と泥と硝煙の匂いを求め、重い銃を構えた ===== 君への贈り物 ===== [color=LightGray]**2015.01.09 04:05:35**[/color] 「何も残せなくてごめん……」 そう言った彼に泣きながらしがみついた 悲しいくらい優しく抱きとめてくれた彼に 今日だけはずっと笑顔を たくさんの想い、あふれるくらいの優しさを どれも彼の残してくれる、かけがえのない時間 だから、私は彼に笑顔を 残された時間、ずっと ===== 煙草に火をつける。 ===== [color=LightGray]**2015.01.09 03:31:54**[/color] いつもの喫茶店で一人、マッチを擦りタバコに火をつける リンの焼けるこの独特の匂いが好きだ 面倒なことをすると呆れていた彼女はもういない 灰皿の中で、燃え尽きた小さな木片の香りを楽しみながら、 溜息とともに紫煙を吐き出す 寂しさを隠したそれを埋めてくれる彼女は、もういない ===== ご近所登山 ===== [color=LightGray]**2014.09.14 07:00:39**[/color] 即興小説トレーニングより お題「弱い遭難」 制限時間 2時間 [[http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=275124|ご近所登山]] ===== #花火という言葉を使わずに花火を表現する ===== [color=LightGray]**2014.07.24 10:49:05**[/color] 夏の夜空を彩るのは、大輪の芸術で、 少し遅れて来る感動は、 雷のような音と共に衝撃を持って伝わってくる。 目を焼く残像は、心に残り、 そっと横に立つ人を見上げれば、 彼もまた魅入られたように空を仰いでいた。 ===== #夏という言葉を使わずに夏を感じさせた人が優勝 ===== [color=LightGray]**2014.07.16 05:44:05**[/color] 首筋を伝う汗をなでるように熱を含んだ風がゆるく流れ ふと顔を上げれば、焦げるような道路には逃げ水 照りつける日差しに揺らぐ陽炎と耳鳴りのような蝉の声が もう遠い過去の幻を僕に付きつける ===== 部屋 ===== [color=LightGray]**2010.03.20 02:18:31**[/color] 声がしていた。私を呼ぶ声。 優しく何度も繰り返し、遠くから呼ぶ声がする。 揺り起こされるように目を開くと、私は明るい白い部屋にいた。 目の前の椅子に座るのは、男が二人。 ====== その他超短編 ====== Twitter外での字数制限小説 ===== 旅の山中(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.08.15 23:38**[/color] テーマ:「お風呂」「太る」「青々とした山」の内2つを使って、512文字丁度で書く ---- 懐中から小袋を取り出し中身を確認する。ジャラ……と重い音を立てる袋の中身は、しかし軍資金としては心許ない。やはり、そろそろ街へ寄る必要があるだろう。 「久しぶりにお風呂に入れるね」 嬉しそうに声を弾ませる少女に嘆息する。 「風呂付きの宿を選べば、食費が圧迫される」 「ちょっとくらい食べなくてもいいよ、太るもん」 唇を尖らせて反論する少女は、幼くても女だ。生意気を言う小娘を軽く小突いてやると、嬉しそうにクスクスと笑う。他愛もないじゃれ合いに、心中で罪悪感が小さく疼く。 「食った分は、まだ成長に回るだろう」 雑踏へ近づく不安を覆い隠し、殊更に呆れたような声音で言うと、少女は拗ねたように軽く私の足を踏んづけて逃げた。そして、少し離れると舌を出して、そのまま歩いてゆく。決して見えない所までは離れない。 目を逸らすと、青々とした山の向こうに街の尖塔が小さく見える。 彼女の信頼を、まだ壊すわけにはいかない。だからこそ、街へ近づくことに、細心の注意が必要だろうと、気持ちを改める。 「パパ!遅いよー!」 考えごとのせいか歩く速度が緩んでいたようだ。軽く謝罪を口にし彼女に近づくと、ごく自然な様子で、その小さな手を伸ばしてきた。 ===== 『夏草や兵どもが夢の跡』(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.08.14 00:06**[/color] 「なんにもない所だねー」 夏草の生い茂る広々とした平野に、少女の明るい声だけが響く。かつて、この場所が怒号と剣戟の音に満たされた過去が、まるで夢のようだ。だが、周辺の街からも忌み嫌われ、街道からも外されたこの場所に、盟友たちは未だ眠っている。それでも、この地に咲く花は雪のように白い。彼らの血を吸い咲く花だと言うのに…… 「パパ、これ拾った」 差し出されたのは錆びついた細い腕輪。それは彼らの認識票だ。 刻まれた名を指でなぞるようにして、少女と共に読む。思い当たる節はないと言うように首を傾げる少女を、私は強く抱きしめて嗚咽を漏らした。 「パパ?」 「それはお前が持っていなさい」 運命なのだろうか。それとも、彼女の意志が宿っていたのだろうか。それほどまでに、彼女は我が子を愛していたのだろうか。そして、私の卑怯さを責めるのだろうか。 記憶の中の血の匂いに、涙に濡れた顔をあげ、過去の戦場へ視線を向ける。 いまだ、戦いは終わってはいない。 腕の中のぬくもりだけが、細い糸のように現在と未来へ私を繋ぎ止めてくれていた。 私は立ち上がり、少女の手を引く。 平野を吹き抜ける風が少女を迎えるように、その柔らかな髪を揺らした。 ===== 予定日の雨(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.06.21 11:09**[/color] テーマ:楽しみにしていた○○の予定が雨で流れた男女を描くワンシーン作品 ---- ベースへ戻り乾いたタオルで顔の泥を拭いながら視線を上げると、彼はタオルを首に引っ掛け、窓から降りしきる雨を見ていた。 「死者が出なくて良かったですね」 疲労をため息とともに吐き出し言うと、彼は薄く笑って小さく首を振り、少し考えこんだ後ゆっくりと口を開いた。 「戦争屋の俺たちが、あんなに感謝されるとはな……」 目を細め、珍しく柔らかい表情の彼に返す言葉を俺は持たなかった。沈黙に居心地の悪さを感じたのか、彼は既に乾いた顔をもう一度タオルで拭い不機嫌そうな顔で立ち上がった。 「休憩は終わりだ。もう少し川に土嚢も必要だろう」 「流された家の補修も手伝うことになりそうですしね」 救助された民間人には怪我を負った人間も多くいる。進軍を一時停止し救助にあたることになったようだ。今後の予定を考えつつ入口に手をかけたが、彼が動き出さないのに気付き振り向く。俺が口を開く前に、彼はニヤリと皮肉げな笑みを浮かべ言った。 「明日の合同訓練では活躍する予定だったのにな」 「次の機会にでも回しますよ」 それ以上は彼も何も言わず、雨の中、村へと向かって走りだした。 彼が照れていたのかも知れないと思い至ったのは、雨の中を走り始めてからだった。 ===== Sniper(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.02.09 20:19**[/color] RUNへのお題は『その口で何人の女を口説いたの?』です。 http://shindanmaker.com/392860 ---- 孤独が好き?まさか。仲間がいなきゃこんな稼業やってられるかよ。女が好き?当然。俺の手元の相棒並に思い通りにならねぇのが、また最高だ。人を殺すのが好き?違えよ。このヒリつくような刺激がなきゃ生きていけねぇだけだ。 まったく女ってのは、どうしてああも聞きたがりなんだろうな。 挙句の果てには「その軽口で何人の女を口説いてきたの?」ときたもんだ。そんなもの、イチイチ数えてねぇよ。 ひやりとした冷気の染みこんでくる地面に身を伏せ、草木の隙間から銃口だけを覗かせて、標的を待つ。手だけは常に少し動かしながら、緊張しすぎないように、下らないことを考え続ける。そういう時は、やはり女の話を思い出すのが丁度いい。 視線だけは細い獣道から外すことなく、更に意味もないことを考え続ける。 「来た」 声には出さず口の動きだけで呟く。引き金に指をかけ、深く息をする。まだだ。まだ射線がとれていない。標的も周囲を警戒してはいるが、こちらに気付いてはいない。まだ。もう少し。 息を吐き切り引き金を引く。奴に俺という死神は見えないまま、命を失った身体は崩れ落ちた。 俺は銃を抱え、静かにその場を立ち去った。 後に残す物は、薬莢がひとつだけ。 ===== 月明かり幼馴染編(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.01.18 14:40**[/color] 「だって、兄妹みたいなもんだもん」 その言葉にお泊り中の友人は大げさな溜息をつき、彼の部屋がある方向の窓に目を向けた。こんなに明るい夜では、カーテン越しの光なんて見えないだろうけど、こんな夜中じゃ、きっともう眠っている。 「あれだけ一緒にいて、付き合ってないとかないよー」 月明かりに照らされた彼女の顔は、好奇心で輝いている。ヒソヒソと秘密めいた声音で「大丈夫だよ」と煽る友人から目を逸して、子供の頃から気軽に乗り越えてきた、窓を見つめ小さく息を吐いた。 私だって、彼とそういう関係になれたら嬉しい。ずっと一緒に過ごしてきたから、彼の傍だと安心する。これからも、ずっと一緒にいたいって思う。 「ほら、ちょうどいいよ。明日、プレゼントと一緒に告白。ね?」 明日は彼の誕生日。彼女に協力して貰って、昼間プレゼントも選んできた。ちょっとした、おやつも作った。悪くない出来の筈。机の上には、それが並んで私を応援してくれてる気がしてきた。 「わかった。明日、言ってみる……」 そう言うと、彼女は私の肩を軽く叩いて、にっこりと笑った。そして、女の子の内緒の作戦は、こんな夜には加速してしまうんだ。 ===== 月明かり傭兵編(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.01.18 14:03**[/color] ぼんやりと青白い光に照らされて、緊張し続けていた体から力を抜いた。静かな森の中で、時折木々から雪の落ちる音の他は、ただ相棒の寝息だけが聞こえる。地面から伝わる冷気を避けるように、使い込んだ銃を抱きしめ身を竦める。 空には満月が煌々と輝く。その満ち欠けには、人を狂わせる何かがあると言う。ならば、その明かりの届かない木立の影には、ありえないものが潜んでいるのかもしれない。例えるならば、いつかの戦場で屠った……自らの死を理解出来ず、何かを言うために口を開き、何の言葉すら残せずに逝った新兵の、生を訴えるような悲しげな目が。 もしくは、死んだ筈の戦友だろうか。目の裏に焼きついた彼の背中が、あの木の向こうに見えるのかもしれない。俺が気を抜き脱力したその横で、僅かにも緊張した様子すら見せず、流れるような仕草で銃を構え、闇の中に潜む敵を確実に仕留める銃声を響かせるのだ。 彼の銃の音すら耳の奥で鳴り響いた気がして、小さく息を吐くと、緊張が白く空気に溶けていく気がした。 暗闇から目を逸らせば、月明かりに浮かぶ相棒の姿がくっきりと見える。まだどこか幼さの残る顔立ちの彼は、何も変わらず静かに眠っていた。 ===== 大人の階段修正版(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.01.15 00:45**[/color] 彼にとって、その男は憧れだった。 肺も凍るような冷えた空気の中に、嗅ぎ慣れた火薬の匂いを感じる。彼にとって男と共に駆け抜ける戦場は未来への希望であり、彼が生き延びるための命綱でもあった。男の後方支援として、その背を支え続けることが使命だと信じていた。 だが、男は今、血溜まりの中に倒れ、空を仰いでいる。 僅かな雪を赤く解かし、土を黒く染めてゆく男の命。失われゆくものの重さに膝をつく彼に、男はそれでも力強い視線を向ける。 灌木の中に身を潜めているとはいえ、敵に見つかるのは時間の問題だろう。だからこそ彼は進み、自ら戦わなくてはならない。感傷で留まることを、決して男は許さない。それでも、耐え切れず目を伏せる彼に、男は震える手で胸元のタグを引き千切り、最期の一言を遺した。 「行けっ!」 押し付けるように渡された遺品を手に、彼は走りだした。 最後に彼が見た男の姿は、銃を支えに体を起こし、彼の進む道を援護するため、尚も戦おうとするその背中だった。 ===== 大人の階段(512文字) ===== [color=LightGray]**2015.01.14 23:03**[/color] 彼にとって、その男は憧れだった。肺も凍るような冷えた空気の中、そこに嗅ぎ慣れた火薬の匂いを感じる。それを男と共に駆け続けることが、生き延びる希望だった。 だが、その男は今、血溜まりの中に倒れ、空を仰いでいる。灌木の中とはいえ、すぐに見つかるだろう。彼は進み、自ら戦わなくてはならない。留まる事を男は許さないだろう。目を伏せる彼に、男は震える手で胸元のタグを引き千切り、最後の一言を遺した。 「行け!」 押し付けられた遺品を手に、彼は走りだした。最期に見た男は、銃を支えに体を起こし、尚も戦おうとしていた。 {{tag>text}}